2025/03/07 23:48

これらは、秩父土産として作りはじめたものの一部です。


秩父銘仙と蜆の根付け(左)

秩父銘仙は埼玉県西部「秩父地方」の伝統的な絹織物で、大正時代から昭和初期にかけて全国で爆発的に流行しました。
絹糸を染めてから織る秩父銘仙は、タテ糸とヨコ糸との色の組み合わせと絹の光沢で、独特の光を放ちます。
その風合いを、どうにか伝えたいと考えていました。

話は変わって、秩父の地質。
今でこそ山々に囲まれた盆地の秩父ですが、太古は海だったそうで、約1300万年前に絶滅した哺乳類「パレドパラドキシア」の化石が出土しています。
そのような地域なので、今でも二枚貝の化石が見つかることは珍しくないようです。

そこでふと思い付いたのが、蜆の根付け。
幼い頃に祖母に作ってもらったり、友達のおばあちゃんに作っていただいたり。
蜆の小さくぷっくりしたフォルムなら、秩父銘仙の色を表現できるかも?と思ったのでした。


和同開珎の巾着袋(右)

和同開珎は、初めて広く流通した日本の貨幣です。
日本国内だけでなく、遠くは渤海でも出土しています。
飛鳥時代に武蔵国秩父郡(現:埼玉県秩父市黒谷)で、日本で初めて高純度の銅が産出し、それを記念して年号を「和銅」と改元し、和同開珎を製造したと言われています。

そんな歴史が秩父にあるなんて!と、和同開珎をモチーフにしたいと考えていました。
そこで選んだのが木版摺り。

木版を用いた染色は世界各地で見られますが、紀元前のインダス文明ではじまったそうです。
現在でもインドでは、伝統的な染色技法として盛んに行われています。

日本には鍋島更紗があります。
木版と型紙を組み合わせた独特の技法なのですが、代々口伝で伝承されていたため大正初期に一度歴史から消えてしまいました。
技法がわずかに記されている秘伝書と見本をもとに故・鈴田照次氏がその技法を戦後に解明・復元し、「木版摺更紗」として発表しました。

そんな歴史の流れに憧れて、和同開珎の巾着袋には木版と型紙を使用しています。
和同開珎の木製スタンプを手作業で彫り、1つ1つ捺印し、その後1つ1つ型染めしています。
和同開珎の書体や大きさ、古銭の鋳造特有の線のゆがみを大切に再現しました。
ポップな色使いですが、歴史ロマンを詰め込んでいます。
▲版を彫るための印刀

風水と金運

前置きが長くなりました......金運の話です。
この巾着袋を手にされた方から
「金運アップしそうですね」
という声を、いただきます。

そうなったら良いな~と思って染めていますが、私は普通の人なので、そのような幸運を授ける力は残念ながらありません。
ですので代わりに、少し風水の話をしたいと思います。

風水で古銭は、古来からの強い財運を現代に受け継ぐ力があるとされています。
昔は貨幣を使うこと自体が特別で、和同開珎も権力者達が富や権力の象徴として所有していたようです。
「古銭=金運アップ」というのも、なんとなく納得できるものがあります。
古銭の使い方は、赤い紐で結んだり壺に入れたりと、様々な用法があるので調べてみると面白いと思います。

貝も金運アイテムだったりします。
古くは貝が貨幣として使われていたこともあり、「貯」など財産に関する漢字には「貝」が使われていることが多いです。
二枚貝はその姿から「お金をはさんで離さない」と解釈することもあるようです。
また風水では天然繊維を推奨していますが、なかでも絹は特別な素材とされています。
鈴の音色も、厄を除き幸運を呼ぶとされています。

金運=西に黄色?

風水は日本でも珍しくはありませんが、シンガポールではより身近なものです。
シンガポールでの留学をきっかけに、風水のことを調べた時期があります。
特に東洋哲学や東洋思想を制作のヒントにしていたこともあり、とても興味深いものでした。
例えば「金運=西に黄色」の説ですが、理由を説明すると......
まず西は金属の方位です。
金属を育てるのは、土。
土の色は黄色。
なので金運を上昇させるために、土の色で金の力を補う......というように考えます。
非科学的な不思議な世界をロジカルに考えるアンビバレントな感覚が、とても面白いです。

かといって風水ばかりに気をとられていると、生活は難しくなります。
例えば
「カーテンが必要だけど、別に何色でも良いや...」
というようなとき、ヒントを風水から得る形で使ってみるのが良いのではないかと思います。
楽しく健康に...が大切!
また風水は様々な学説があるので、いろいろ読んでみて、相性の良い風水師の説を基準にしてみるのが分かりやすいと思っています。